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夏は暑い。 八月ともなれば日本は亜熱帯とかす、などと言うものもいるほど暑い。なにせ地球温暖化だ。この半世紀でどれだけ真夏日が増えたか。 暑いと人は涼を水へと求める。文明開化前の冬木ならともかく、今の工業化の進んだ冬木では海に入ることはできない。そこで冬木市はプールを作った。今では県でも有数のスポットだ。 さて、そんな入水には適さない冬木の海だが曲がりなりにも水辺ならばいくらかは涼しいものだ。げんにその場にいる者達は暑い思いをしていなかった。役一名など不本意な海水浴で低体温症を引き起こしているほどだ。その役一名ことイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、間桐慎二の言った言葉に疑問符を頭の上に浮かべた。 「シンジ、だったかしら?」 声を幾分震わせながら、イリヤは問うた。それにシンジこと間桐慎二は視線で言葉の先を促す。 「オリジナルの聖杯戦争って、どういうこと?」 「そうだよ!それってこの殺しあいが何度も起きてるってことなのか!?」 イリヤにつられるように、色丞狂介も声をあげた。彼からしても、このようなものがいくつもあるという点は驚きに値する。 一方この場に四人いるマスターでアリス・マーガロイドだけは沈黙を貫いていた。彼女にももちろん思うところはあるし多少の驚きもあったが、聖杯戦争に種類があるというのは予想の範囲内であった。それに、彼女の疑問はこの二人が代わりに聞いて、答えはペラペラと少年が話すだろう、そう考えてあえて何も言おうとはしない。 そして皆の視線を一身に集めるなか、やれやれといった感じでシンジは話し始めた。 「そもそも聖杯戦争ていうのは願いを叶えるアイテムの奪い合いのことだ。」 「魔法のランプっていうおとぎ話は知ってるだろ?ああいう使うと願いが叶うものを全部まとめて聖杯ていうんだ。」 「そんなことを聞いてるんじゃないわ、そんなの聖杯戦争の常識じゃない!私が聞いてるのはこのーー」 「ちょっと待った!それ常識なの?聖杯戦争てみんな知ってるものなの?」 「あなたは黙っててキョウスケ!」 「な、なんだよ、えーとーー」 「イリヤ!イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ、それでシンジ、これが冬木の聖杯戦争のパクりってどういうことなの?」 「ちょっと待て今アインツベルンて言ったか?御三家の一つじゃないか!」 「アインツベルンてそんな有名なの?」 「ええそうよでも私は今そんなことを聞いてるんじゃないの早く質問に答えてもらえる?」 「それが人にものを頼む態度か!?御三家ならそんぐらい自分でわかるだろ。」 「へー、淑女(レディ)にそういう態度をとるのね、マキリは。」 「何がレディだ小学生はノーカン、アウトオブ眼中なんだよ。」 「言葉が古いのよワカメ頭!」 「ワカメじゃないウェーブだ!」 「どうみてもワカメじゃない!」 「ウェーブて言ってるだろ!このオシャレさもわからないからガキなんだよ!」 「ダサいのよ!キョウスケ、あなたもそう思うでしょ!」 「おい狂介お前からも言えこのオシャレさを!」 「そうだぞ狂介はっきり言ってやれ。」 「キャスター?!便乗はズルいだろ!!」 『マスター、これは止めた方が良いのでしょうか……?』 『そろそろ収集がつかなくなりそうだし、そうね。』 今まで一言も話さなかったアリスはパン、と手を叩く。言い争う三人のマスターの目線が集まる。 「なにか、聞こえないかしら?」 冬木市の警察が有能か無能かは評価が分かれる。 冬木大橋での無差別通り魔殺人及び爆破テロという未曾有の事態に直面して、冬木市の市境に検問を張り早速現場付近での捜査を数百人規模で行っているというのは有能と言えるだろうし、変質者の通報があったにも関わらず小一時間目撃された港に来なかったのは無能と言える。 だがともかく、一応警察は来た。サイレンを鳴らしてパトカーが向かってくる以上、キャスター達は離れなければならない。なにせ通報にある不審者とはまさしくキャスターのことだからだ。そしてその被害者とされているのはそのマスターである。 「御三家なら金持ってるだろうけどガキに払わせるのもあれだからおごってやるよ。」 「せいぜい10ユーロぐらいで威張らないでくれるあ・り・が・と・う。」 「で、何処にいくんだ慎二?橋は通行止めらしいけど。」 「教会だ。あそこは中立地帯のはずだ。そこなら落ち着けて話せるだろう?」 「言峰教会ね。」 あのあと四人のマスターは、一度場所を移して仕切り直すことにした。 慎二と狂介は港から離れる必要があったし、アリスもイリヤも慎二から聖杯戦争について聞き出さなくてはならない。 四人の思惑が合わさった結果、全員で同じタクシーに乗るという展開になったのだ。これは、それぞれのマスターへの危害をもっとも減らそうとしたためである。港では、直径10メートル程の円の中のエリアに四人のマスターがいた。このとき、どのサーヴァントも他のマスターを攻撃することはできない。彼らの攻撃では自らのマスターも巻き込みかねないからだ。そして距離をとろうとするマスターは、その真意に関わらず他の主従から巻き添えを食らわないために距離をとったという警戒を招いてしまう。このようにどのマスターも他のマスターから離れられないという状況が狭いタクシーへの乗車を選ばせた。 因みに、席順はアリスが助手席、慎二が右、狂介が左、イリヤが真ん中である。もちろんこれを決めるにも二三分かかった。「なんで私が座り心地の悪い真ん中なの」とか「びしょ濡れのお前の横に座るこっちの事情も考えろ」とかタクシー運転手を困惑させながら険悪な雰囲気を終始醸し出していた。 付け加えると、サーヴァントの内、赤城とパピヨンは屋根やボンネットに腰かけることになった。パピヨンはともかく赤城は陸上での機動力には難がある。均衡を崩すような真似を避けるためにアリスは赤城をタクシーに乗せたかったのだが生憎そのスペースはない。というわけでフロントガラスを背もたれにボンネットに腰かけたパピヨンの後ろ、屋根に乗せることにした。このとき赤城がパピヨンとは対照的な凄く切ない顔をしていたのだがフドウを除いてそれを知るものはいない。 「それじゃあ、出発かしら。」 後部座席に振り向くとアリスは全員の顔を見渡す。ようやく一時の平和が訪れたことを確認した。 タクシーは、ゆっくりと走り出した。 【新都、港近くのタクシー/2014年8月1日(金)0638】 【アリス・マーガロイド@東方Project】 [状態] 健康。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 幻想郷に戻ることを第一とする。 1.オリジナルの聖杯戦争? 2.とりあえず色丞狂介、間桐慎二、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと行動を共にする。 3.定期的に赤城の宝具で偵察。 4.できれば冬木大橋を直接調べたい。 5.人形を作りたいけど時間が…… 6.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ…… [備考] ●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。 ●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)のステータスを確認しました。 ●タクシーの助手席に座っています。 【赤城@艦隊これくしょん】 [状態] 筋力(20)/D、 耐久(150)/A++、 敏捷(20)/D、 魔力(10)/E、 幸運(30)/C、 宝具(30)/E+++ 霊体化、魔力消費(小)、タクシーの屋根に搭乗中。 [思考・状況] 基本行動方針 マスターを助ける。今度は失敗しない。 1.警戒を厳に、もしもの時は壁役に。 2.定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。 3.魔力を補給したいが今は黙ってる。 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】 [状態] 全身ずぶ濡れ、磯臭い、低体温症、頭痛、その他程度不明の怪我(全て治癒中)。 [装備] 特別製令呪。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 全員倒して優勝する。 1.オリジナルの聖杯戦争? 2.とりあえずシンジとキョウスケとアリスと行動を共にする。 3.なんなら同盟を組んでもいい。 [備考] ●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。 ●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。 ●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。 ●自宅はアインツベルン城に設定されていますが本人が認識できているとは限りません。 ●バーサーカーと共に冬木大橋から落とされました。怪我の有無や魔力消費は不明です。 ●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。 ●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)のステータスを確認しました。 ●タクシーの中央後部座席に座っています。 【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】 [状態] 筋力(50)/A+、 耐久(50)/A、 敏捷(50)/A、 魔力(50)/A、 幸運(40)/B、 宝具(50)/A、 霊体化、不明、狂化スキル低下中。 [思考・状況] 基本行動方針 イリヤを守り抜く、敵は屠る。 [備考] ●イリヤと共に冬木大橋から落とされましたが少し流されたあと這い上がっできました。 【間桐慎二@Fate/stay night 】 [状態] 疲労(小)、精神的疲労(中)。 [残存令呪] 3画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。 1.とりあえず狂介とアリスとイリヤと共に教会へ。 2.なんだか段々大所帯になってきたな…… 3.ライダー(孫悟空)は許さない。 4.間桐家で陣地作成を行う。 5.会場と冬木市の差異に興味。 [備考] ●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。 クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。 ●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。 ●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。 ●タクシーの右後部座席に座っています。 【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】 [状態] 筋力(30)/C、 耐久(40)/B、 敏捷(60)/C+、 魔力(100)/A+、 幸運(50)/A、 宝具(50)/A 霊体化。 [思考・状況] 基本行動方針 マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━ 1.成り行きにここまで任せてきたが…… 2.今は慎二に従い、見定める。 3.求めるなら仏の道を説くというのも。 4.色丞狂介、か…… [備考] ●慎二への好感度が予選期間で更に下がりました。ただ、見捨てたわけではありません。 ●狂介に興味を持ちました。 ●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。 【色丞狂介@究極!!変態仮面】 [状態] 疲労(小)、精神的疲労(中)、ハンバーガー所持。 [残存令呪] 1画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。 1.オリジナルの聖杯戦争? 2. とりあえず狂介とアリスとイリヤと行動を共にする……イリヤはずぶ濡れだけど大丈夫かな? 3.ランサーだけあって逃げ足は早いんだな…… 4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。 5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる? [備考] ●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。 ●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。 ●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。 クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。 ●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。 ●タクシーの左後部座席に座っています。 【キャスター(パピヨン)@武装錬金】 [状態] 筋力(20)/D、 耐久(30)/C-、 敏捷(30)/C、 魔力(40)/B、 幸運(50)/A、 宝具(40)/B 霊体化。 [思考・状況] 基本行動方針 せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。 1.……ここまで影が薄いとは…… 2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か? 3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥? [備考] ●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。 ●気分で実体化したりします。 ●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。 ●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。 ●ビッグマックとハッピーセットは狂介に押し付けました。 ●タクシーのフロントガラスを背もたれにしてボンネットに座っています。
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令呪の使用用途 そもそも令呪って? 令呪とは魔力の塊のようなものです。これをリソースにして、様々な事象を起こすことが可能です。また、サーヴァントを制御するためにも使用することがあるため、無闇矢鱈な乱用は避けたほうがいいでしょう。 令呪の回復方法 原則として、令呪は聖杯戦争中に3つまでしか所持できず、消費した場合回復することはありません。ただし、監督役によって討伐対象に指定された陣営を撃破した場合、報酬として令呪を回復してくれる場合があります。この際でも、令呪は3つを超えて所持することはできません。 令呪の使用効果 令呪の効果はサーヴァントに対してのみ有効です。 一画消費 幸運を除く任意のステータスに補正5。攻撃判定時に同効果の重ね掛けは不可 対象を自害させる 任意発動スキルの再使用 攻撃時に固定値+7ダメージ。同効果の重ね掛けは不可 判定の振り直し 二画消費 HPの全回復、もしくは宝具のストック全回復 戦闘フェイズ以外の自身の判定前に使用可能。判定を破棄し、別エリアへ飛ぶ。多分対気配遮断用 三画消費 戦闘フェイズの自身の判定前に使用可能。判定を破棄し、別エリアへ飛ぶ。最終戦闘では攻撃の無効化として扱う 目次 メニュー はじめに 基本的に用意するもの ゲームの流れ FAQ ルール マスター + ... ー アライメント ー 逃走待機ポイント ー 令呪 ←現在ページ ー 素質 サーヴァント + ... ー クラス ー 宝具 ー ヒント 監督役(GM) エリア 各フェイズ + ... ー 移動フェイズ ー 遭遇フェイズ ー 戦闘フェイズ 各判定 + ... ー 先手判定 ー 逃走判定 ー 物理攻撃判定 ー 物理防御判定 ー 魔術攻撃判定 ー 魔術防御判定 真名看破 スキル + ... ー マスタースキル ー クラススキル ー 単独行動 ー 気配遮断 前衛と後衛 再契約 脱落 陣営 同盟 + ... ー 援護 ー 裏切り ー 同盟の解散 魂喰い 最終戦闘 状態異常
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小さな一軒家が彼女たちの暫定的な住処だった。 特に不自由のないその住処で、サーヴァントである彼は《会場の全域を見渡していた》。 相変わらずのチート性能だった。しかし使えるものは惜しみなく使っていこうと彼女は判断し、見渡している。 それに、見た様子ではチート云々とは言っていられない状況でもあった。 金髪の幼女が、おそらくはマスターであった人形をぐちゃぐちゃにしていたりと、なんとも散々な「リレー」が各所で起きている。 ごきゅりごきゅりと、冷蔵庫に仕舞われていたペットボトルの水を飲みながら、彼女はマスターの登場を待つ。 ぱたぱたぱた、と音がした。 扉の裏では彼女のマスターが落ち着かない様子で小走りしているのが《見える》。 飲み干してしまったペットボトルを机に置き、食べかけのおにぎりを手に取った。 もぐもぐ、と咀嚼しおにぎりを嚥下し、彼女、「××××」のサーヴァントは音の発生源を向く。 もうしばらくしたら、マスターがこちらにやってくるだろう。 彼女は《姿を変え――ぐるぐる目の少年へと成り変わる》。 途端に狭まる視界にくらりとしながら、椅子に座ったまま彼女を迎えた。 ばたんと鳴る。 淡く彩られた薄茶色の髪を乱暴に揺らす姿が見えたかと思うと、こちらにつかつかと歩み寄ってきた。 乱れる吐息を隠さず、引き締めた表情でこちらにその双眸を突きつける。 おいおい聖杯戦争と言っても書き手ロワだぞ、とも思わなくもなかったが一般人ロワ出身の彼女のことだ。 そういった緊張感は自ずと身につくものなのだろう。 「まあ、書き手聖杯戦争が書き手ロワのノリとも限らないし」 「なに?」 「ううん、なんでもないよ」 そういって、「××××」のサーヴァントは立ち上がって、どこか悲壮感の漂う禿頭の中年に《変化》した。 その手は武骨で大きく、かさかさと乾燥している。だけど暖かくて、慈しむようにマスターの頬を撫でた。 「流石アイドルってところかな。プニプニしてる」 「んっ……くすぐったい」 「あはは、じゃあそこに座りなよ」 先ほどまで自分が座っていた椅子を指した。 首を縦に振り、マスターである少女はぽとりと腰を下ろす。 すると隣でくしゃりくしゃりとビニールがこすれている。おにぎりだ。 「食べよう」 「……うん?」 「食事シーンがあるロワは面白い、ってね」 特に根拠のない理論を広げて、おにぎりを手渡す。 コンビニで売ってる感じのアレだ。海苔をはがすのを失敗した痕跡が見受けられる。 訝しんだのか、若干の躊躇いがあったが、少女は小さな口におにぎりを頬張った。 冷めていた、それでもやわらかい肉の食感とさっぱりとした塩味の風味がする。 「ねぎ塩……カルビ味?」 「びっくりだよね、どうしたってこんなもんが冷蔵庫に入ってんだって」 「……でも、おいしい。帰ったらもっと食事シーンも入れようかな……」 「そりゃよかった。僕もこのおにぎりをロワで出したからね、評価が悪かったらどうしようかと思ったよ」 もぐもぐ。 どんどんとおにぎりは口に含まれていく。 満足そうに、サーヴァントである彼は頷いた。 そんな《ルール》はないけれど、少しでも彼女の背負う重荷を《軽く》できたのなら、それは十全だ。 微笑ましく見つめるサーヴァントを傍に、マスターである少女はおにぎりを食し終える。 随分と落ち着きを取り戻したようだ。手についた海苔の味気を気恥ずかしそうに舐めとった後、「それで」と仕切り直す。 「アンタ、少しは自分のこと思い出せたの?」 「いや、全然。もしかしたら、そういう《ルール》なのかもしれない。なにせ僕は英霊であると同時に文字だから」 「……よく分かんないけど、それで、どうするの。私に……協力してくれるの?」 マスターは令呪をちらつかせ、サーヴァントに問う。 実際のところ、答えに意味なんかない。 生き残るためなら、なんだってするんだから。令呪だって惜しみなく使っていく。 あの輝かしい日々を取り戻すため、――大切な友達(書き手)達ともう一度ロワを紡ぐために。 サーヴァントは目をパチクリとさせて、小さく笑いを零す。それから。 「質問返しして悪いんだけど、……リレー小説ってやっぱり、楽しいのかな」 《ちゃらついた、今風な男に変身しながら》、問いなおす。 「いやあのね、うん。オレにもリレー小説を書いてた過去はあったんだ。だけど思い出せないんだよ。 これが英霊だからなのか、オレが特別文字だからなのかはわかんねえけどね! だから知りたいんだ、リレーってなんなのかをさ!」 机にぽつねんと立てられたペットボトルをゴミ箱へ乱暴に掴み取り投げ捨てた。その勢いに同調するように感情のまま言葉を並べる。 ペットボトルの描いた軌道を目で追い、かつんと、軽い衝撃音を聞いてから、マスターは改めてサーヴァントの目を窺った。 語調の割には落ち着いた様子を見せているが、輝く瞳は確と燃えている。 英霊とは、一人の人生の軌跡を顕現させるものだ。 原作Fateにおいて、勿論のことサーヴァントには生後から死後までの記憶がみっちりとこびりついている。 だけど、彼は漠然としか思い出せなかった。これが他のサーヴァントにも言える、書き手聖杯の不具合なのか、 自らが設定した《ルール》によるものかは不明瞭であったが……知りたかった。 非リレー書き手としての記憶しかない彼にとって、リレー小説が如何なるものかというのは、極めて底知れぬ疑問である。 椅子に座ったまま、静かに彼女は答える。考えたわけでもないけれど、自然と言葉は決まっている。 「私は、ロワ経験に関しては全然なかった新米プロデューサーだったんだけどさ、 友達である書き手のみんなは私の手を引いて、一緒に物語を紡いでくれたんだ」 知ってる人ぞ知ってる設定だが、彼女は流星の如く現れた新米Pだった。 それでも確かな実力を見せつけ、ファンの方々を大いに奮わせてきた。 しかしそれは、一人では成し遂げられなかった――。 「そうだね、私もこれまでたくさん友達とリレーしてきたけど、やっぱり嬉しい。 だけど、それだけじゃないかな。どんなに頑張って一人じゃ描けない物語を、みんなとなら描ける」 二人でなら、ロワも楽しい。 三人でなら、ロワはもっと楽しい。 もっともっとたくさんいるのなら、ロワはもっともっと楽しくなる。 ――みんなと一緒なら、どんな苦難や困難、痛みも乗り越えられると思うから。 少なくても、ロワ経験の乏しい彼女は、そうやってこれまでやってきた。 友達のために――その思いで北条加蓮と神谷奈緒とが寄り添ったように。 「リレー小説ってのは、そういう補い合いでさ。私は好きだよ。どうしようもないんだ」 非リレー書き手である彼は黙然と聞いていた。 ロワっていうのはそれだけじゃないと思いながら。一人でしか書けない物語は確かにあると、確信していながら。 練り上げたプロットを組み立て、壮大な物語を築き上げてきた彼は、それをよく知っている。 ……だからこそ、なのだろうか。 「そっか、そうなんか」 彼女に共感が抱けない、だけど、興味深い。 あくまで非リレー書き手でしかない彼にとっては未知なる感覚。 知りたい……それが、彼の率直な願望だった。 非リレー書き手としての誇りを失うわけではない。……むしろその逆。 彼の在り方があまりにも非リレー書き手然としているがための衝動だった。 「オレの知らねー世界は、やっぱり確かにあるんだよな」 そう言って、彼女の在り方を、リレーの在り方を認めた。 未知の領域に触れる。 ぶるりと身体が震えた。 「なんて、面白そうな体験なんだ」 知らず知らずうちに、じゅるりといった擬音が鳴りそうだ。 これまでいろんなことをやってきた。熱血展開も、鬱展開も、考え得る限り、なにもかも。 でも、それは非リレーと言う枠内でだ。ならば、「リレー」という枠外へ出た時、自分はどこまで通用するのだろう……。 考えると、身体が震えて止まらない。 サーヴァントを傍目に、アイドル――北条加蓮の姿を模したマスターは一つ嘆息する。 背もたれに身体を預けて、サーヴァントに問う。 「でもさ、その質問って大事なの?」 「大事さ、今から俺たちはいろんなロワ書き手と出逢う。――そして、物語を綴る。これって、書き手間のリレーって言えるだろ」 《筋肉質な赤毛の男に変態し》、意気揚々と答える。 まさに、その通りだ。書き手同士の祭典である書き手聖杯戦争は、書き手自身が物語を紡ぐことで成りたつ。 書き手の持ち得る全てを刃と化し、しのぎを削り、物語を紡ぎ……渡し……一つの聖杯戦争と言う物語を完結させる。 故に、リレー。リレーの集大成。 「ま、アンタはアンタで思うようにやればいいけどさ」 自分のネイルを見ながら、ぶっきらぼうに答える。 しかし、彼女の言葉はそこで終わらなかった。 「さっきのおにぎり、おいしかったよ」 ただ、その一言だけで。 あのワンシーンは、サーヴァントのよく知るものから僅かに乖離した。 頭の中で、ゴツンと強い衝撃が走る。 「私とアンタのリレーは、どうだった」 あれは非リレーで使ったワンシーン……約束された結末への一部分にすぎなかったけれど、リレーの一部となって再現された。 全然違う物語の一部として……自分の手とは離れた結末へと向かうための一要因として。 つくづく非リレーとリレーの違いを感じる。 彼は……起承転結(◆YOtBuxuP4U)というサーヴァントは面白そうに頬をゆがめ。 「良かった」 満足そうに頷いた。 物語が自らの手から離れることで、不安感や焦燥感は増していく。 だけども、先の見えない期待感は非リレーでは得難い感覚だった。 「これが、リレーか」 なるほど、どうして多くの書き手がリレーに惹かれるのか、得心がいく。 みな、こうした期待感の渦中で、希望を成就させようと筆を執っている。 今の自分は非リレー書き手でしかないけれど、リレー書き手であった自分が確かにいた事実も納得できた。 「繰り返すけど、私に協力、してくれるの?」 友達と一緒にリレーをするために、他の書き手を蹴散らしていく。 それが彼女のスタンスである。十分承知の上で、起承転結は答えた。 「ああ。せっかくの機会だ。己の全てを賭けて、聖杯戦争を勝ち取ってやる」 他の書き手たちとリレーができるのならば、どういう形でも良かったのかもしれない。 今回のマスターが、たまたま好戦的だったから、こういうスタンスへと相成ったのかもしれない。 でも、それでいいのだ。 見定めてみようじゃないか。自分の知らない世界を。 綿密にプロットを練る自分の在り方とはまるで異なるリレーの世界を。 「ね、じゃあさ、私の友達になろうよ。そして一緒に聖杯を掴み取る《物語》を綴ろうよ」 「……はいよ、今からあたしはお前の親友だ。刀となり、お前を守り、一緒にリレーしていこう」 《ポニーテールのジャージ女に姿を改め》、起承転結は頷いた。 それを聞いて、最高の友達Pは華やかな笑顔を咲かせた。 それはそれは、凛として強く、なおも可憐で麗しいアイドルのように。 【マスター】 最高の友達P(◆j1Wv59wPk2)@モバマス・ロワイアル 【マスターとしての願い】 友達の元へ帰る。そのためならばなんだってする。聖杯にかける願いは現状不明 【容姿及び口調】 北条加蓮 【weapon】 ピストルクロスボウ 【能力・技能】 アイドルとしての魅了。 【代表作品】 「My Best Friend」、「私はアイドル」、「ああ、よかった」など 【人物背景】 心情描写に長けたプロデューサーさん。動作や台詞からアイドルの心情を染み出させることが非常に上手く、 それ故にj1氏が書く作品は読者の心に力強く訴えかけてくるようなものが多い。 また、作品のタイトルを、そのパートの一つ前の作品のタイトルを踏まえたものにするなどの憎い演出をすることも。 大きく鉈を振るう行為などはあまりしないが、堅実なリレーを得意としており、 前述した心情描写も相まってモバマスロワを支えている縁の下の力持ち的存在として君臨している。 大きく鉈を振るうことはあまりないにしろ、苦い、だけど仄かに優しさの香る死亡話の数々は一読の価値あり。 【方針】 一般人ロワ出身である彼女はそれ相応の緊張感をもって聖杯戦争に参戦している模様。 起承転結と共に書き手聖杯の物語を紡ぎ、優勝して帰還する。 【クラス】 ××××(解釈不能) 【真名】 起承転結(◆YOtBuxuP4U)@四字熟語バトルロワイアル 【パラメーター】 筋力:E~A 耐久:E~A 敏捷:E~A 魔力:E~A 幸運:E~A 宝具:EX 【属性】 秩序・善 【クラススキル】 不明 【保有スキル】 多重召喚:- 宝具の影響で二重召喚どころか多重にまで至った稀有な例。 ただし、起承転結の場合、勇気凛々の場合はセイバー、鏡花水月の場合はキャスター、と、 変身する姿によってクラスが固定であるため、二重召喚のように、同時に複数のクラススキルなどは持ちえない。 非リレー書き手:A 非リレー企画を続けていくには、書き手が自分ひとりであっても根性や技量が必要な修羅の道を歩まなければならない。 このスキルはいわば「単独行動」の上位互換であり、マスターが不在で行動できる。 その上、マスター不在時は各ステータスが1段階ずつアップする。 オリキャラロワ書き手:B そのままオリキャラロワ書き手。 本物であり続けるスキル。想像力/創造力なら天下をとれる! 絵師:C 支援絵を投下した書き手に付与されるスキル。 それだけで他書き手/読み手から感謝され崇められる。 とはいえ起承転結は非リレー書き手なのでその恩恵は低い。 【宝具】 《変幻自在》 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 ――《四字熟語ロワに参戦しているすべてのキャラに変身できる》 発動は意識するだけで行える。タイムラグなどはほぼない模様。 この宝具は、彼が非リレー書き手であり、オリキャラロワの書き手である伝承が転じたものだ。 一から全てを創り上げたキャラクターに愛情が湧かないわけがない! どのキャラに対しても分け隔てなく愛を注いでいれば、そのキャラそのものになりきることもできるのだ! 余談だが、四字熟語ロワ的には《起承転結》という宝具名が適切なのだろうが、紛らわしいため起承転結自身が改めた。という設定で 【容姿】 特定の姿をもたない 【Weapon】 変身している四字熟語にそぐうもの 【主な作品】 「都市伝説」、「確定申告(前/中/後)」、「最終戦Ⅰ~Ⅴ」など 【書き手紹介】 2011年10月10日に現れた、継続的に投下している非リレー書き手の一人。 非リレーは元々オリキャラロワに対して敷居の低い場所ではあるが、それをいいことに好き勝手やっている人。 基本的には心情や、それを描くための演出を重視する作風をとっている。 しかしそれだけにとどまらず、燃えるような熱血を描いたかと思えば、直後に裏切るかのような鬱を描いたりと多才なお方だ。 また、非リレーということもあり、ロワ開始前から緻密なプロットを練っていたらしく、 全体を通した構成力や、そこに至るまでの展開力も尋常ではない。肝心のオリキャラの構築も素晴らしいの一言。 非リレーということもあり、一人で物語を積み上げなければならないが、三年以上屈せず書き続けている精神力にも拍手を送りたい。 【スタンス】 普段ない《リレー》の機会なので、他者と接触し、物語に介入していく 【基本戦術、方針、運用法】 プロットを練ることを得意とする書き手の在り方から、事前に綿密な作戦を用意してから戦いへ赴くスタイルを得意としている。 相手の出方などによって適宜戦術を変えていく必要があるだろうが、四字熟語ロワ全キャラに変身できるため応用力は高い。 偵察のための《一望千里》、対セイバーでは恐らく最高峰の《優柔不断》、シンプルに攻めたいのなら《勇気凛々》などなど。 使い方次第では如何なる場面でも対処が可能だろう。 ただし、特出している能力に欠けているため、ゴリ押し系のパワータイプの書き手などには弱い。 また、マスターである最高の友達Pは基本的なスペックは一般人並であるため、マスターによる支援が皆無に等しいのも弱点となりがちだ。 015:タチムカウ-絶えることなき生の証明- 投下順に読む 017:陰日向に咲く……? 最高の友達P 024:連鎖反応 起承転結 024:連鎖反応 ▲上へ戻る
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90 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・昼:桜の服を買おう] 投稿日: 2007/03/27(火) 05 15 30 「わかった……」 着飾った桜というのも見てみたいと思ったが……桜がそう言うのなら仕方がないか。 桜の言葉を尊重して派手ではない服を見て回ることにしよう。 ふと上の棚を見ると、一着の服が目にとまった。 「それじゃあ、あれなんかどうだろう?」 その服を指差し、そこに視線を向けさせ、手を伸ばしてハンガーから外す。 それはエプロンのような、割烹着のような、そんな服である。 控えめでありながら、没個性ではない色彩。 前面は丈が長く大きなポケットが一つ付き、逆に背面は少し短めで、下部を紐で止める形になっている。 胴体部分と肩から先の部分は違う布地らしく、取り外しの可能なようで、夏冬、暑さ寒さに対応でき、外した袖は肘当てにもなる。 ポケットの縫製は頑丈に縫いつけられており、飾りポケットではないようだ。 それに……長めの丈は屋外での林檎狩りや苺狩りの時に便利そうでもある。 「ほら、これさ」 桜に手渡してみる事にする。 受け取った服をじ、と真剣な眼差しで見つめる桜。 ややあって、にこりと微笑んで。 「これ、買っちゃいますね」 そう言ってくれた。 「あ、うん、こういうので良いのかな? その、まるで自信がないから、変だったらそう言ってくれた方が嬉しいぞ?」 頭を軽く掻きながら言っておく。 「私に似合うかどうかは分かりませんけど、でも気に入っちゃいました……それに、先輩に服を選んで貰うのって初めてですから」 桜が胸元に服を抱きしめて目を閉じる。 その顔はとても嬉しそうなので、安堵する。 「気に入ってくれたのなら、よかった」 思わず笑顔になって、桜の頭を撫でる。 「わ……」 桜の顔が赤くなるのがちょっと嬉しくて、顔を近づけていく。 そのまま唇を…… 「二人とも、ラブラブな空気を出すのは良いけど、人前だからね?」 その言葉で我に返ってさっと飛び退く。 ……忘れていた。 周りを見渡すと、若奥様と言った人があらあらと楽しそうに、頬に手を当ててこちらを眺めていた。 「あ、ああ……どうしたんだ名城?」 少し混乱しながらも、現れた名城に聞く事にする。 「あの二人の試着が終わったから呼びに来たのよ……別に続けててもらってもいいんだけどね、あの二人が不機嫌になりそうだから」 「あ……わかった、すぐに行くよ、行こう、桜」 桜の手を取って歩き出す。 「はいっ!」 桜の声は弾んでいた。 ……二人の服はとんでもなく似合っていた。 ノインはフリルの沢山付いたドレスのような朱色の服を着込み、髪型は猫耳を思わせるような形をしていた。 一方、イリヤはもうそのまんまドレス姿である。 動き回れるようにスカートこそ短めになってはいるが、その埋め合わせの如く上半身は豪奢さに埋め尽くされている。 イリヤから自然に溢れ出る気品と、服装から溢れる気品の融合である。 そして服装そのものもとんでもなく似合っているのだ。 白い肌と殆ど同色の白いドレス。 それを形容する言葉は見あたらない。 愛と言う言葉を愛以上の言葉で表現できないように。 その姿が似合っている、という言葉以上に似合っていたのだ。 ソラマメジマ:その視線に気付いたのか、ノインの頬がむくれた キメンハントウ:その視線に気付いたのか、桜が頬を抓ってきた アララサンミャク:各人の反応を楽しんでいるのか、後ろで名城が含み笑いをしていた 投票結果 ソラマメジマ:5 決定 キメンハントウ:1 アララサンミャク:1
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107 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:血跡] 投稿日: 2007/01/18(木) 04 21 25 影がぶつかり合う。 一つは音にも迫らんばかりに一直線に空を駆ける。 対する一つは、耳障りな哄笑と狂気を散らしながら虚空にて待ちかまえる。 ……それは幾度となく繰り返された光景だ。 今現在切った札は互いに少なすぎる。 だが、それとて『空を飛ぶ』という一点でもって圧倒的なアドバンテージを有している。 クラスとして最優であるセイバー。 英霊であるその身をして、飛行するという力を持たぬ身である以上、虚実入り乱れる攻勢など不可能である。 その差をして拮抗しているという事実こそ奇妙。 バーサーカーは新たに札を切り、それをして攻めることは幾らでも可能なはずであった。 「くっ!」 セイバーはまたも一撃をいなされ、爪をその身に受けた。 だがその爪の先、腕を右手で掴み、腹部を狙う一撃。 半ば牽制ではあるが、無防備に受ければ肋骨を砕いて余りある威力だ。 その一撃を、セイバーの身体ごと回転して回避する。 バーサーカーは空中であることのアドバンテージを、これ以上無いほど生かしている。 その回転と同時、開いた左腕を突き出し、肩へ掌底を叩き込み、その反動を利用して再び足場へと戻る。 空中に、しかも足場から遠い場所に居る限り優位は動かないと認めたのは既に過去。 だから認めた段階で、作戦を変えた。 彼の『宝具』さえ使えばその状況も動くだろうが、消耗は極めて大きく、何よりこれ以上ないほどに目立つ、それこそ大地を、街を抉る光の剣が如く。 故にその使用は不可能。 そうであるが故に、バーサーカーが動いた瞬間こそが好機。 その瞬間を、息の殺して待ち続ける―― 「……よし」 少し不安ではあるが、相手も所持している以上、拳銃の攻撃性能は無視できるモノではない。 莫耶をベルトに挟み、拳銃を両手で構えて消え始めた足跡を追跡する。 勿論、罠の可能性もあるため警戒は必須だが、ただ体勢の立て直しのために逃げているのならここで倒さねばならない。 外の敵――バーサーカーと呼ばれていた――は紛れもない殺人鬼であり、そのマスターも確実に殺人を肯定し、それどころか罪があるのかと問うた。 そのような在り方であるが故に、衛宮士郎は、正義の味方を志す者はその在り方を否定しなければならない。 彼は人を犠牲にしない為に、戦っているのだから。 ビルを抉り取るように大きく開いた穴から先の部屋を覗き見て警戒する。 姿勢は出来るだけ低く、血痕を追跡する。 一つめ、二つめの部屋には特に何か置いてあることはなさそうだ。 血の跡を追い、続けて三つ目の部屋を覗き見る。 「……ん?」 部屋に血が広がっている。 溢れた跡と言うよりも、結果として溜まったような跡だ。 「後ろを警戒して立ち止まったのか? それとも何か……」 物陰から出て、血溜まりに触れる。 埃や破片で白く汚れているが、やはり乾いては居ない。 ふとその先を見る。 抉り取るような穴は変わらず、だが。 「血痕が、途切れている?」 突然すぎる出来事に、咄嗟の思考が追いつかない。 罠? だとすればこうして注目して動きが止まった段階で何かをされているはずだ。 周囲を見渡すが爆発物や細いワイヤーのような物は……ない。 「だとすれば……なんだ?」 バックトラック? いや、そうだったとしても血痕は残るだろうし、そんな元気があるならやはり攻撃をしてくるのではないだろうか? あの時使われた魔術は防御のみという事から、防御のみに特化しているという仮定の下で、さらに武器が無いとすればその疑問は解消できる。 「とはいえ、血の跡が消えたことの説明にはならないよな……いや、待てよ」 今夜の衛宮邸での戦いで、桜が腕に影を巻き付けて止血処理をしていた事を思い出す。 防御魔術の応用で、似たような事が出来るのか? 追撃を警戒しながら止血すると同時に、その処置の際に生じる自らの血の跡に注目させ、警戒させて距離を稼ぐ。 ……ありえるな。 強襲:そうはさせない、一気に追いかける 警戒:いや、そう考えさせるのも罠だとしたら? 投票結果 強襲 4 警戒 5 決定
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635 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/08/24(金) 04 13 42 「……エンジンを掛けても大丈夫ですか?」 逸る心のままにそう問うた。 その言葉が引き金になったのか、シャリフさんが堰を切ったように笑い出した。 その笑い振りは、見ていて清々しいほどで、思わず三人して見入ってしまった。 「ああ……面白かった、こんなに笑ったのは、ひょっとしたら初めてかもしれないわ、真面目そうな外見の割に抜けてるのね、『姉さん』て」 涙さえ浮かべて笑っていたのか、目元を軽く拭いながらシャリフさんが言った。 「……こんなところでエンジン回したら大問題よ、色々とね」 その言葉で思い出した。 Y2Kの排気ガスはとんでもなく高温だ。 有毒ガスとかそんなレベルの事はこの場合問題ではなく、可燃性の物体に引火して小火になりかねない。 実際土蔵の中身は木製の卓袱台だの藤ねえが持ってきて処分に困ったポスターだのが保管という名前で放置されている。 やったことはないがこんな物に600度を超えるガスが叩き付けたら多分即座に発火する。 「……ライダー、ここでエンジンを回すのは危ない、小火になる」 「そうでした……それにキーも差さっていませんね」 「キーはここよ」 そう言って、シャリフさんが手品のように肩口からキーを取り出す。 まるでそこに袋があるかのように、服の切れ目のような場所――だがそこには縫い目すらない――からだ。 「……今のは?」 手品の類ではないのは分かる。 「さあ、何かしら?」 誤魔化すように笑い、ライダーにキーを放り投げる。 それを無言のまま受け取り、ポケットに仕舞い込む。 「まあ、騒音の問題もありますから、遮音の結界を展開して貰わないといけませんね……まあスラストに比べれば静かでしょうが」 「……ライダー、それどう考えても比べる物間違ってる」 スラスト、正確に言えばスラストSSCはモンスターマシンと言うよりもモンスターそのものだ。 Y2Kはヘリのエンジンを搭載しているがスラストSSCは戦闘機のエンジンを二機も搭載しており、地上でマッハを公式に記録した代物だ。 そもそもあのマシンは明らかに『乗りこなす』とかそう言ったレベルの代物では無い。 読んだ雑誌には書かれていなかったが、あの直進振りから考えてみれば、左右に方向転換するためのハンドルすら無いのかもしれない。 「それじゃ、確かに渡したわよ」 それだけ言って、用件は済んだとばかりに踵を返す。 「衝動的に手に入れた物だけど……大事にしてくれると、嬉しい」 最後の方は消え入りそうな声だったけれど、それでも聞き取れた。 「ええ、勿論、大事にさせて貰います」 もしかしたら、彼女は感情表現が苦手なのかもしれない。 桜にもライダーにもそう言った面はあるし、桜に喚ばれた彼女も同じなのかもしれないと、ぼんやりと思った。 ぼんやりと眺めた背中は、土蔵の中からはもう見えなくなっていた。 「それじゃ、俺達も戻ろうか?」 「……そうしましょうか」 『結局私はなんで呼ばれたんでしょうか?』と言いたげな、釈然としない表情で桜が頷く。 ……この事を知っておいて欲しかったからなんだろうとは思うが、正しいかどうかは分からないのでそれは口にしない事にした。 「では私も少ししたら向かいます、二人はお先に」 剥がした布地を戻しながらライダーが笑う。 戻しながら車体を撫で回し、機体のラインを確かめているようで、その様子はいつになく浮かれている。 まあ、気持ちは良く分かる。 即座に諦めたとはいえ、乗り回したくて仕方の無かった機体だ、それが目の前にあって乗る気になればいつでも乗れるとなれば、そりゃ浮かれるのも当然だろう。 事実、握ったままの布地は掛けられることなく、もう片方の手で撫でたまま、目を潤ませて顔を赤らめている。 なんというか、その表情は物凄く色っぽい。 「……さあ、行きましょう」 ライダーの姿をじっと見ていたら桜に頬を抓られた。 なんというか、凄く痛かった。 印籠:居間に戻る ジェム:自室に戻る クラウン:縁側に座り込む
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451 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage五日目・昼:瓦礫の戦場] 投稿日: 2007/05/01(火) 04 32 37 彼は、岸部露伴は命を賭けている。 恐らく、死への恐怖など克服している。 彼に対する過大評価になるかも知れないが、彼を庇いながら戦うと言うことは、彼への侮辱に繋がることかもしれない。 だったら、目の前のこいつを倒すことに全力を傾ける。 「……命の保証は、できませんからね」 それだけを言って、意識から彼の存在を消し、目の前の敵に集中する。 敵は一人、恐らく御同業 サーヴァント だとすれば互いにマスターは居らず、一対一の状況。 崩れた廃墟は隠れることを容易にし、取り回しの効く拳銃は屋内戦闘に於いては射程距離の制約は無く、また威力の点でも申し分ない。 そして己の武器は高速展開が可能とはいえ、所謂『祈願型』ではなく、自動防御は不可能。 かといって一面を吹き飛ばしてしまえば、『人』を巻き込む。 だがあの防盾はさして強力な代物ではなく、魔法――この世界で言う魔術――による補正があったとしても、貫通は可能だろう。 何しろ、あの盾の原型は恐らく一般的な防盾――浅間山荘事件ではライフル弾が貫通し殉職者を出した代物だ。 現在は強化プラスチックに改良されているはずだが、それでどれほどの効果を生むというのか―― そこまで考えた瞬間、気配が変わるのを理解した。 素早く物陰から物陰に移動しながら銃弾を連射する。 敵の攻撃と同時に即座に防御壁を展開し、反撃する。 そこまで思考し、高速で魔法を編み上げる。 敵の攻撃に対し逆ベクトルの射撃を行う攻勢防御魔法だ。 そして拳銃弾が予定通りのベクトルでもって魔術に着弾する。 「ッ!」 防御壁に激しい振動が発生する。 その一撃、拳銃弾にあらざる程の一撃に驚愕した。 貫通はないが、反撃の一瞬を逃すほどの一撃だった。 「射撃中止、銃弾解析……!」 相手の位置を知るために敢えて開けた場所へと走りつつ反撃を中止し、銃弾とそこに込められた概念の正体を解析する。 概念は『殺害』 その銃弾に貫かれた人間は死ぬ。 岸部露伴を貫いた銃弾とは別種の、必殺の銃弾。 予め準備していたのか、戦闘状態に入ったという精神状態がこの銃弾を生み出すのか、とにかく、この銃弾に貫かれれば死ぬらしい。 飛来する銃弾を時に防御魔術で弾き、時にS2Uで叩き落としながらながら互いの位置と、そこから推測される行動パターンを解析する。 戦闘の主導権を奪われぬよう素早く動き回っているが、それでも攻撃の主導権は奪われたままだ。 牽制の魔法弾は、一見何の変哲もない防盾に弾かれて吹き飛ばされる。 その事から察し、あの防盾にはなんらかの防御関連の概念が付与されている これは彼の推測でしかないが、対魔力ではなく、攻撃全般に対する絶対防御の概念だろう。 でなければ降り注いだ数十キロの瓦礫を受け止めて尚防盾に傷一つ無いことに説明が付かない。 つまり、こうしている限りは手詰まりであり、なんらかの手段を持って盾を突破しなければ勝利はない。 「非常識だな……この世界の英霊ってのは!」 これまでもそうだったが、多くの存在が彼の理解を超えていた。 『死んだ直後に復活する』『音速で走る』『無数の部下を召還する』等々、召還されてから驚くモノばかり目にしている。 本来『神秘を競い合う』事がこの戦争の真髄だと聞いていたが、それは最早神秘と言うよりも非常識にしか思えない。 まして敵となるのはこの世界のどこかで信仰されてきた英霊という存在である。 仮に魔法と戦術を持って追い詰めたとしても、宝具という逆転の手段を有している以上撤退する相手に深追いも危険すぎる。 故にこれまでの多くの戦いで勝利したことすら稀で、敵の撃破は一度もない。 ただ、空中への追撃能力を持つ相手は昨日目撃した戦闘機部隊以外に存在していないようで、こちらの撤退だけはスムーズに行えたのは幸いだった。 今更ながら、彼自身が提案した『座を捏造して世界を騙し、正規の手段で聖杯を入手する』というのは無謀な策であったと思い始めていた。 だが、後悔している暇はない。 生き残るためにも、この戦争に勝利するためにも、人を巻き込まないためにも、この敵は排除しなければならない。 エフレム・クルツ:手詰まりの戦闘を続行しながら対象の解析を続行する イサドラ・ダンカン:砲撃魔法を打ち込み防盾の限界を見極める アルトゥール・ニキシュ:相手の銃を狙い攻撃能力を奪う 投票結果 エフレム・クルツ:5 決定 イサドラ・ダンカン:3 アルトゥール・ニキシュ:3
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Night of The Round ガウェインとの契約を交わし、今後の行動を決めようと思案していた時、 ルルーシュは不意に眩暈を覚える。 「……ッ!?」 不意に襲われた不快感に頭を抱え、 もう一度頭を上げた時、 そこには思いもよらない光景が目に入る。 「なっ…!?」 先程までの宮殿のような光景は消滅し、 窓から月の光が差し込む長い廊下の真ん中に いつの間にか自分は立っている。 『ムーンセルによる移動が行われたようですね』 傍から白銀の騎士の声だけが響く。 「ガウェインか? 何処にいる?」 ルルーシュの声に反応するように光が集約し、 人の形を成していく。 ものの数秒で始めからそこに居たかのように ルルーシュの傍らに白銀の騎士が現れる。 「常にお傍に」 サーヴァントの霊体からの実体化を初めて目の当りにし、 若干腰が引けているが、それをガウェインに悟らせない様に 咳払いを一つし、ガウェインに目を向ける。 「……ムーンセルとはどういう事だ?」 ルルーシュの質問にガウェインは暫し沈黙した後、 周辺に目を向け、何事かを閃く。 「丁度良い場所に飛ばされたようです。 着いて来て下さい、口で説明するよりも 分かりやすいものが有りますので」 そういって彼は暗い廊下を先行していく。 それを訝しみつつもルルーシュも後に続いていく。 「こちらです」 そう言って彼が指し示したのは一つの個室。 扉の上に貼り付けられたプレートには 『図書室』と書かれている。 「ここは……図書室? 何の冗談のつもりだ、ガウェイン?」 眉間に皺を寄せ、詰問するような口調のルルーシュを 微笑んで軽く流し、ガウェインは引き戸を開けて中へ入っていく。 顔を顰めつつ、ルルーシュも中へ入ろうとして 今までの暗い廊下とは違い、 明かりの点いた室内に一瞬、目を細める。 「あっ、いらっしゃい! あなたがマスターさん?」 図書室の受付に座る黒い学生服を着た少女が 明るく声をかけてくる。 その傍ではガウェインがにこやかに ルルーシュに手招きしている。 「説明をしろ、ガウェイン! この女は誰だ? 何故、俺がマスターだと知っている!」 声を荒げるルルーシュを宥め、 隣の女性を示して、 「彼女は間目 智識(まめ ちしき)さん。 我々のサポートをしてくれるNPCです」 ガウェインに紹介された少女がルルーシュに手を振る。 だが、その少女を無視し、 ルルーシュはつかつかと歩を進めると ガウェインに詰め寄る。 「それで、この馬鹿みたいな名前の女が 何の役に立つというんだ?」 「バッ!? き、気にしているのに……」 ルルーシュの言葉に凹む少女を「まぁまぁ」と宥めつつ、 にこやかなままガウェインはルルーシュに向き直る。 「落ち着いてください、ルルーシュ。 ここにはムーンセルに集められた 全ての情報が記録されています。 彼女はここの管理人です」 エッヘンと胸を張る少女を不審そうな目で眺め、 疑念は晴れはしないままに仕方無さそうに ルルーシュが口を開く。 「……取り敢えず、ムーンセルと聖杯戦争に ついての記録を出して貰おうか?」 「あいあい」と軽く返事をして少女がPCに向かい、 キーボードを軽快に叩いていく。 すぐにPCのディスプレイに映った文字列を眺め、 少女は一瞬、困った表情を浮かべると 「はい、これだよ」 と、一冊の書籍を取り出す。 その本を手に取り、ぱらぱらと捲り ルルーシュが首を捻る。 「……如何いう事だ? 俺は『ムーンセル』と『聖杯戦争』についてと言ったのだが、 これには『聖杯戦争』についてしか記載されていないが?」 ルルーシュの質問に少女は「あはは~」と 困り顔をしつつ、言い訳を始める。 「いやですね、私も出来れば協力したいんだけど 『始めから答えを与える様な甘えは許さん』って、 どっかの神父さんから通達が来てましてね」 「本当にごめんなさい!」と両手を合わせる少女に 舌打ちこそしたが、それ以上の追求はせずに ルルーシュは渡された本に目を落とす。 「……随分と断片的な記録だな。 過去のものに到っては行われた回数と日付のみか… ん? この第5次聖杯戦争というのは 最近行われたものなんだな?」 それまでは断片的だった記録が その部分に関してだけは詳細に記載されている。 「勝者は衛宮士郎…イレブンか。 待て、そういえば此処は何処だ?」 唐突な移動により頭から抜けていた疑問が 「イレブン」という単語で急に頭を過ぎる。 「此処は冬木市。 貴方の世界で言う所のエリア11の 一つの街ですよ、ルルーシュ」 疑問に対してすかさずガウェインが答えを返す。 その隣では少女が仕事を取られたような 情けない顔をしていたが。 「……エリア11。 日本だったのか、此処は」 自分にとっては因縁深い場所である事に対してか、 ルルーシュの表情に蔭りが差す。 だが、一つの疑問が頭を過ぎり、 頭を上げてガウェインに視線を向ける。 「いや待て。今、お前は『貴方の世界』と言ったな。 それはお前が過去の人物だから言った事か?」 ルルーシュの質問にガウェインは驚いた様に目を丸くした後、 その行為が無礼に値すると感じたのか恥じ入るように 少しだけ俯いた後、すぐに顔を上げて真剣な表情でルルーシュを見つめる。 「いいえ、言葉の通りです、ルルーシュ。 貴方は『この世界とは異なる世界』から 聖杯によって選ばれたのです」 ガウェインの言葉や表情に偽る様なものは無い。 俄かには信じがたい話だが、 ルルーシュの明晰な頭脳はこれまでの経緯も含めて その可能性を素直に受け入れる。 「平行世界(パラレルワールド)か・・・ そうすると聖杯というものは 確かに願望器と呼ぶに相応しいな」 顎に手を当て、呟く様に答えを導くルルーシュに ガウェインが微笑んで言葉を続ける。 「聖杯は情報の収集を主としております。 いえ、正確にはそれしかしないんです。 ですがそれは同時にあらゆる可能性にまで及んでいます。 その情報量は私には想像も及びません」 「それが何故願いを叶える事に繋がる?」 「私に分かるのは其処までです。 何故それが願いを叶えるのに繋がるのか それを知る事が出来るのは 最後に勝ち残った勝者だけですから」 「あわわわ……な、何この人、いきなり核心にまで迫った!? ルルーシュ、恐ろしい子ッ!」 一人、驚愕の表情を浮かべている少女を尻目に ルルーシュは足早に出口へと歩いていく。 「どちらへ?」 ガウェインが首を傾げてルルーシュの後を追う。 「取り敢えず、ここが何処なのかという事と 聖杯戦争と言うものについては知る事が出来た。 当面はここに来る用も無ければ、 ここに長居する必要もない。 ここで情報が閲覧できる以上、 ここに来る者は全て、 他のマスターという事になるだろうからな」 口元に少しだけ笑みを作り、さっさと扉を開けて 一人先に外に出て行ってしまう。 やれやれといった様子でガウェインも後に続き、 出口の前で少女に深々と一礼した後、 その姿を霊体化させて、その場から消えた。 「……さて、誰か来る前に仮眠しとこ」 取り残された少女は寝袋を取り出して、 いそいそと仮眠の準備に勤しむのであった。 「ガウェイン、そこに居るんだろう?」 見向きもせずに声だけで確認する。 『ハイ、こちらに居ります』 今度は実体化せずにこちらも返事をするだけに留めている。 「さっきの書籍に気になる名前があった。 第5次聖杯戦争の勝者、衛宮士郎。 会ってみる価値はあるだろう」 ―――――――――――――――――――――――――― コンロに火を点けて、薬缶を温める。 その間に台所の戸を開けて、茶葉を探す。 「えぇっと、あぁ有った。 セイバーは緑茶で良いか?」 「えぇ、私は何でも構いません」 台所からセイバーの姿に目をやる。 キチっとした姿勢で正座し、 穏やかな表情で自分の方に目を向けている。 目が合い、何だか気恥ずかしくなって 慌てて薬缶に向き直る。 程よく暖まったお湯を急須に注ぎ、 湯飲みにお茶を淹れる。 ほんのりと渋い匂いに少しホッとする。 「出来たぞ、セイバー」 「ありがとうございます、シロウ」 机に向かい合う形で座り、 お互いの湯飲みを置く。 お茶を少しだけ啜る。 熱めに沸かしたお茶が逆に心地良い。 気分が落ち着いてきたのでそろそろ本題に切り込む。 「セイバー、今回の聖杯戦争についてなんだが セイバーも気づいてるよな? 今回の聖杯戦争はおかしいって事」 セイバーも湯飲みを置き、士郎の言葉に続く。 「えぇ、理解しています、シロウ。 7騎ではなく25騎にも及ぶサーヴァント。 これは明らかに異常です」 その言葉にうんと頷き、そして首を傾げる。 「セイバーは聖杯の事は分かんないんだよな? 柳堂寺の地下の大聖杯はもう無いんだ、 じゃあ、今回の聖杯は一体何処から現れたんだ?」 「すみません、シロウ。 聖杯の所存については私も分かりません」 しゅんとしょげかえるセイバーに慌ててフォローをいれる。 「いや、別にセイバーを責めてる訳じゃないんだ! ただ、今回の事は分からない事だらけで 俺も如何したら良いか分かってないんだし」 気分を落ち着ける為にお茶を一気に流し込む。 まだ少し熱かったが気分は少し落ち着いた。 「そ、それでだな、セイバー。 今回も夜の見回りをしようかと思ってる」 提案としては愚直も良い所である。 しかし、自分にはここから手を付けるしかない事を 分かっているからこその提案である。 セイバーは机に置いておいた湯飲みを持ち、それを一口啜る。 コトリと湯飲みが置かれ、セイバーが真剣な表情で シロウの顔を見つめる。 「分かっています、シロウ。 ですが、約束して下さい。 決して一人では無茶な行動はしないと」 「あぁ、俺もあの頃よりは理解出来てるよ。 セイバーを心配させるような真似はしない」 お互いに真剣に見つめあい、意識を確かめる。 後は空になった湯飲みを持ち、台所へと向かう。 湯飲みを洗いながら後方のセイバーへと声を掛ける。 「そうだ、セイバー。 俺もただぼんやりと過ごしてたって訳じゃないんだ。 一緒に道場の方まで来てくれないか?」 ―――――――――――――――――――――――――― 乾いた竹刀の音が響く。 だが、それは打ち合いと言うにはあまりにも一方的で、 指導と言った方が的確な状態である。 振るわれた竹刀が腕に当り、 思わず竹刀を取りこぼす。 「……いてて、やっぱりセイバーには敵わないか」 「確かに以前よりは上達したようですが、 まだまだですね、シロウ」 ご満悦と言った表情でセイバーが胸を張る。 そういえば、前から気になっていた事があるから、 ご満悦ついでに聞いておこう。 「そういやさ、セイバーは剣の腕で誰かに負けた事はあるのか?」 その言葉にセイバーがムッとする。 「何を言いますか、シロウ。 私はセイバーの名を冠するサーヴァント。 剣に於いて他に遅れを取ることなどありません!」 誇らしげに話すセイバーだが、ちょっと引っかかる事があるな。 「いや、でもセイバーって確か伝承じゃ――」 その言葉を途中で遮られる。 セイバーの顔は真剣で何かに集中している。 この感覚は――まさか! 「シロウ、近くにマスターが来ています! かなりの魔力を感じます、間違いありません」 セイバーの周りに風が集まり、 瞬時に礼装に包まれる。 セイバーの様子からして、相手も相当やばい奴だ。 「シロウはここに!」 言うや否や、セイバーが一人で外に飛び出してしまう。 慌てて続こうとして前にもこんな事があったのを思い出す。 あの時はセイバーがアーチャーの奴を切り伏せちゃったから、 とんでもないことになってしまったんだった。 「…とと、こんな事考えてる暇はないぞ。 セイバーを追わないと!」 急いで表門から飛び出し、周囲に目をやり、 セイバーの姿を探す。 「居た!」 意外と近くに居たセイバーに安堵すると同時に疑問が起こる。 遠くに見えるセイバーは明らかに動きを止めている。 相手の反撃にあったような感じでもない。 何かに驚いているといった様子だ。 「セイバー!!」 走りながら意識を集中させる。 『―――同調、開始(トレース オン)』 一番、意識しやすい二振りの剣を投影する。 <干将・莫耶> 陰陽二振りの短剣。 アイツが使っていたのは気に食わないが、 瞬時に投影できるのはこれくらいなのだから いちいち選り好みはしてられない。 短剣を構えて、セイバーの横に並ぶ。 セイバーの姿にはやはり何処にも外傷は見当たらない。 ならば、セイバーは『何』に対して ここまで驚いているのだろう? セイバーの視線の先に目を向ける。 そこに白銀の騎士が立っていた。 「お久しぶりです、アーサー王。 いえ、今はお互いにサーヴァントの身。 叔父上と呼んだ方が宜しいですかね」 白銀の騎士が構えていた剣を収める。 「あなたは……ガウェイン」 固まっていたセイバーが口を開く。 ガウェイン? ガウェインって、確か円卓の騎士で アーサー王の片腕とまで言われた騎士の事か? 剣を収めたと言う事は少なくとも 向こうに今は敵意は無いみたいだが。 「フン……いきなり飛び掛る番犬とはな。 前回の勝者とやらはその無節操さで 他の者に勝利したのか?」 悪態をつきながら白銀の騎士の影から一人の青年が姿を現す。 細身で黒髪だが瞳の色が日本人ではない事を証明している。 「……誰だよ、お前!」 セイバーはまだガウェインと呼ばれた騎士に驚き、固まったまま。 いくら相手が知り合いだったからと言って油断が出来ない事は 前回の経験から充分に身に沁みている。 警戒心を解かない俺を青年は鼻で哂い、 「俺の名前はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。 貴様に用があって此処に来た。 セイバー「ガウェイン」のマスターだ」 そう言って、右手に刻まれた令呪を翳した。 【深山町・衛宮邸前/深夜】 【衛宮士郎@Fate/stay night】 [状態]:健康(残令呪使用回数:3) 【セイバー(アルトリア)@Fate/stay night】 [状態]:健康 【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス】 [状態]:健康(残令呪使用回数:3) 【セイバー(ガウェイン)@Fate/Extra】 [状態]:健康 BACK NEXT Interlude Cannibal Corpse 投下順 027 Cyclone 043 Interlude 時系列順 027 Cyclone BACK 登場キャラ NEXT 003No.3 衛宮士郎 セイバー 040 FINAL DEAD LANCER(前編) 010No.10 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア セイバー 040 FINAL DEAD LANCER(前編)
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892 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/11/13(月) 05 16 04 「……よし」 衛宮邸の周囲に民家はそれほど多くない。 そして諜報活動とは基本的に長期に渡る地味な物だ。 そう言った関係上、対象に気付かれぬ距離、位置から覗き込む等が基本となる。 サーヴァントにそう言ったことを任せるならば霊体化して行わせれば良い。 だがそうではなく、マスターが行うならば屋内という環境は必須だろう。 そういった前提で幾つか可能そうな家を脳内でピックアップしていく。 「みんな、提案がある」 「何?」 遠坂達を見つけ、話を切り出す。 「昼間の話、覚えているか? イリヤを迎えに来た男の話」 「この家に見張りが付いているって話でしょうか?」 ルヴィアが言った。 「ああ」 「それが何か?」 「襲撃を待つんじゃなくて、こっちから仕掛ける、というのはどうだろう?」 その言葉に遠坂が驚く。 「……驚いたわ、前の士郎ならキャスターを連れて……下手をすれば一人で乗り込んで行くと思っていたから」 フォローの準備はさせていたけどね、と続ける。 その言葉は確かに頷ける。 これまでの衛宮士郎ならば、きっと一人で危地へ乗り込んでいただろう。 「分かったって事だよ、一人じゃ限界がある、頼れるところは頼った方が良いってこと、そしてここには守るべき人達が居るって事もな」 足下を守らなければ、人を救うという高みは目指せない。 だからまず、この家という足下を守る事は大前提だ。 遠坂は無言のまま、口元で僅かに笑みを浮かべた。 「行動は遅いけど、集団行動の心構えは合格ね」 「……え?」 「大丈夫、今バゼットとセイバーの二人に偵察に出て貰っているの」 昼間の戦いを思い出す。 確かにあの二人ならば、戦闘になっても勝利、最悪でも二人とも生き延びて帰還することが出来るだろうと思える。 そして衛宮邸に戦力が集中する形となり、防衛能力にも問題はないと判断できる。 「それから、あの四人はちゃんと私が眠らせたし、なのはとフェイトにこの家の結界の強化もして貰っているの、多分そろそろ終わると思うわ」 「そ、そうか」 空振りに終わった結果に、思わず肩の力が抜ける。 「じゃあ、俺はどうすれば良いんだ?」 空回りに終わったやる気が走り出しそうにあふれている。 「私はセイバーと念話が出来る、だから意見を聞かせて。 ロンドンから帰ってきたばかりでこの辺りがどう変わったかは情報不足、だから情報が欲しいの」 「ああ、そうだな……まずこの辺の民家で言えば霧島家とか怪しいな、ここから数百メートルの距離だし、今は家族旅行中の筈だ、それに……」 考えついた限りの怪しい場所を列挙する。 「……それから柳洞寺と学園の屋上、かな」 「ふぅん……」 少しの間が開く、先生と会話しているのだろう。 「……ビンゴよ、貴方の言っていた霧島家に監視者の痕跡を発見したらしいわ」 23 45・霧島家 鍵は掛けられていなかった。 数分間だけの、簡単な調査を行う。 「なるほど、旅行に出掛けた家にしては……」 セイバーが邸内を見渡しながら言う。 「ええ、そうですね、このゴミは新しすぎる、それに僅かですがジャンクフードの残り香もありますね」 ゴミ袋の中身を確認しながらバゼットが言う。 この臭いはバゼットにとって嗅ぎ慣れた物だ。 24時間営業で全国展開しているジャンクフードショップ。 彼女自身そこはよく利用したものだ。 「と、なれば間違いなく、ここに監視者が居た、と言うことでしょう」 「ええ、そうですね、でなければここをアジトにしていて、今は街へ出撃中、と言ったところですか」 『御名答』 声が響いた。 同時刻・衛宮邸 「――な、まず……」 遠坂の表情が変わった。 「どうした? 遠坂」 「発見されたらしいわ」 「な……」 「……悪いことは重なる物だな、私の斥候部隊から報告が来た、敵らしき連中が接近中らしい」 ジェネラルが言った。 「敵は何者? すぐに教えて」 ダブルクロス 第一群(霧島家) 再戦:「よぅ、セイバー、奇遇だな」ランサー、そしてタイタニア・ヴィルベルトがそこに立っていた 遭遇:「留守中に俺の根城に入ってくるなんて、随分な人達だね」夜だというのに、サングラスを掛けたままで男が呟いた 出現:「だが何者だ? この場所にわざわざ来るなんてな」そう言って武器を構えた。 第二群(衛宮邸) 挟撃:「敵は2方向から接近、バーサーカーらしいのが単独行動、もう一つは……群体らしい」 強襲:ジェネラルが何かを言う前に、黒い球体が衛宮邸の壁を吹き飛ばして突っ込んできた 決定 遭遇 挟撃
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68 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:確信と共に] 投稿日: 2007/01/16(火) 03 52 07 ビルの壁を足場に駆け上がる。 地上は闇に溶け始め、より攻撃に適した位置へと跳ね回る。 だが、それはただ一方のみ、もう片方は哄笑と共にただ宙に浮いていた。 セイバーの拳が放たれる。 だが、壁面という支えから離れてしまった以上、その軌道は単純な物にならざるを得ない。 ナイフよりも鋭い爪が拳と共に迫り、セイバーの拳が出血する。 だが抉られた拳と、相手の爪を支点に軌道を変え、近接戦を敢行する。 手刀で延髄を狙う。 この一撃とて必殺。 一瞬でも意識を奪えば、その瞬間に地面に向けて両の拳をあわせて叩き落とすだろう。 だが、敵、バーサーカーは狂っていても尚冷静だ。 空を足場にするかの如く下へと向かい手刀は回避され、同時に爪という支えを失ったセイバーは重力に従って落ちていく。 その直前、足を掴み放り投げるように投げ飛ばし、その反動で逆方向のビルへと回避する。 数分における戦いで互いに決定打を繰り出せない。 否、繰り出そうとすればバーサーカーのみ一方的に繰り出すことは出来ただろう。 だが、バーサーカーはそれをしない。 それとて異常ではあるが、飛行し、物体を飛行させ、牽制する事しかしない。 再び闇に哄笑が響く。 放置された鉄骨が、コンクリート片が、放置されたままの工事現場の物資が次々と、まるでバーサーカーの周囲を護るように集う。 そして集った後、セイバーへ向け次々と放たれる。 一つ一つが神秘を帯びぬ物体とはいえ、空より迫る高質量高速度の弾幕は驚異に他ならない。 ビルの壁まは数秒、その数秒に物体が次々と襲いかかる。 「くっ!」 元より姿勢は上下が逆。 壁への着地すらままならず、弾幕へと晒される。 最初に向かってきた鉄パイプの側面を掴み、腕力のみで真上に軌道を変える。 続く材木は身を捻り回避し、カラーコーンを弾いて姿勢の上下を戻す。 壁面へ着地し、立ち入り禁止の鉄柵を右腕で弾き飛ばす。 この戦いの終幕をセイバーは想像する。 体力を失い、地面へと落下する己の姿を。 だが逃げるわけにはいかない。 ちらりと下を見れば、闇の中にポツリと目立つ、気絶した少女の姿があったからだ。 「これ以上、人を巻き込ませはしませんよ……!」 ぐいと足を撓らせ、再び虚空へと飛びかかった。 勘に頼り追跡することは避けるべきだ。 魔術による空間転移などの例外を除いて考えれば分かる。 完全に足取りを消すなどと言うことは不可能だ。 そうである以上、この荒れ果てた室内で追跡の手掛かりを探すべきだ。 とはいえそう長い間調べることは出来ないだろう。 調べすぎて逃げられては元も子もないからだ。 倒れていたはずの壁は航空機――ファントム――が墜落したことと、その爆風で完全に壊れていた。 「潰されたとか、そういう楽観論は禁物だよな……」 未だ燃える航空機とその煙に気をつけながら倒れていたであろう近辺を調べる。 「……右腕、か?」 黒く焦げていたが、それは人体の一部のように見えた。 そしてその手には拳銃が握られている。 まだ弾は残っているようだ。 「……気味が悪いし、使ったことはないが……念のためだ」 指を離させ、自動拳銃――SIG SAUER P226――を拾い上げる。 ふと後ろを振り向く。 己の歩いた足跡が残っている。 気付かなかったが先程の爆発で微細な埃や破片が大量に降り積もったらしい。 今もパラパラとだが上から落ちてきている。 拳銃を拾うために屈まなければ分からなかったであろう足跡。 「……だとすれば」 周囲を見渡す。 ……発見した。 既に埃が積もり始めていたが、僅かに足跡が残っている。 それによく見れば、血の跡も残っている、相当出血している証拠だろう。 ……既にロックは解除されている。 マガジン内にも弾丸は十分残っている。 動作不良は心配だが、この拳銃は信頼性が高い。 刀剣所持:拳銃を胸ポケットにしまい、莫耶を手にして追跡する 拳銃所持:莫耶をベルトに挟み、拳銃を手にして追跡する 投票結果 刀剣所持 1 拳銃所持 5 決定